研究概要 |
平成3,4年度に引続き、小児癌・白血病研究グループ(CCLSG)(愛知医大小児科藤本教授主宰)の協力を得て、同グループに登録された小児ALLを中心に症例の集積を続け、これらの臨床経過中の微小残存病変(MRD)の定量を行なった。 T細胞受容体遺伝子(TCR)delta鎖遺伝子再構成についてスクリーニングを行った症例は245例にのぼり、このうち110例(44.9%)にVdelta1-D-Jdelta1、Vdelta-D-Jdelta1、Vdelta2-Ddelta3再構成のいずれかを認めた。これらの症例において完全寛解中の骨髄でなるべく頻回にMRD定量を試みた。(経時的にMRDの検体が送付され検索が可能であったのは45例であった。) この結果小児ALLのほとんどの症例において、6カ月以上の治療期間を終了した時点でMRDはPCR検出限界以下になることがわかった。 CCLSGでは初診時の白血球数と年齢に基づいて患者を3つのリスク群に階層化し、異なったプロトコールを用いて治療している。このうち中間リスク群の患者について、ALL874プロトコール(1987年4月から1990年12月まで登録)とALL911プロトコール(1991年1月から1993年12月まで登録)の治療効果をMRDから比較した。911プロトコールは874に比べ、MRDが持続陽性であった患者が多く、治療内容の違いによる差と考えられた。最近、治療抵抗性の白血病や高リスク白血病でドナーの問題などで骨髄移植が行えない場合、これにかわる治療法として末梢血幹細胞移植術(PBSCT)が注目されている。我々は、やはりCCLSGのグループの協力を得て、PBSCT施行症例においても移植前後の骨髄・末梢血やPBSC移植片中のMRDをprospectiveに定量している。この結果、採取したPBSC中にも白血病細胞の混入を認める症例があることがわかった。今後、移植片内の幹細胞数、MRDが治療成績にどのような影響を与えるのか全国規模で調査する予定である。
|