平成3年1月から小児癌・白血病研究グループの協力を得て、集学的治療(ALL911プロトコール)を行っている小児ALL症例を中心に、寛解導入後も体内に残存する白血病細胞の定量をTCRδ鎖遺伝子再構成を指標として経時的に行うこととした。平成5年12月までに245症例の小児ALL初診時白血病細胞DNAでTCRδ鎖遺伝子の再構成を解析し、PCR増幅可能な再構成をもつ症例を110例(45%)をMRD検索可能症例として選別した。このうち、経時的に寛解時骨髄が送付された40症例についてMRDの定量を行った。すべての症例で診断後6カ月以内に第1回目の定量を行った。通常の化学療法を行った36例のうち21例では最初の検索ですでにMRDが陰性化していた。このうち18例はその後も持続的に陰性が続いた。残り3例のうち2例ではMRDが一過性に陽性化し、1例では持続陽性が続いた。残り15例では第1回目の検索時にMRDが陽性であった。このうち9例ではMRDは治療経過に伴い陰性化した。早期に死亡した1例を除く残り5例ではMRDが持続的に陽性で1例は診断5カ月目に再発した。 通常の化学療法を行った36例以外に4例のPBSCT施行症例についてもMRDの検索を行った。これらの症例ではPBSCT施行前後の骨髄のMRDのみならず、採取したPBSCについてもMRDの有無を検索した。3例でPBSC内に10^<-3>〜10^<-5>のMRD混入がみられ、PBSCTにより一過性に骨髄MRDは減少したがすべて再発した。1例ではPBSCにMRD混入はなかったがPBSCT後、中枢神経再発がみられた。 本研究を通じて小児ALL患者におけるMRDの動態の一部が明らかになり、今後治療への応用が期待される。
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