研究概要 |
都市化の進展に伴う土地改良区における水利調整の実態について,全国から三つの土地改良区を選んで地域分析を行った。 第1に飛地的都市化と土地改良区の対応の例として兵庫県東播土地改良区について調査をした。農地転用の分析と集落水管理の実態を明らかにしただけでなく,鴨川ダムの農業用水の一部を都市用水へ転用を実現していることについても評価することができた。 第2に住宅化・工業化に伴う土地改良区の対応の例として新潟県西蒲原土地改良区について調査をした。農地転用の分析と末端の水利維持管理組合の実態を明らかにし,場水機・排水機の維持管理費の増大に対して,都市側の地域排水負担金によって都市・農村間の水利調整を行っていることがわかった。 第3に工業化(トヨタ自動車工場)の進展と土地改良区の対応の例として,愛知県明治用水土地改良区について調査した。農地転用による賦課面積の減少状況や用水幹線水路の緑道公園化についても明らかにした。さらに、明治用水の水源である矢作川の水質汚濁との関連において,流域管理モデルを構成し,その中核に土地改良区を位置付けた。 以上,三つの土地改良区の地域分析の結果から,次の二つの共通点を明らかにすることができた。 第1点は急激な都市化によって,土地改良区の主体である零細農家から構成される村落共同体が空洞化し,農業水利施設の維持管理システムが機能しなくなったことである。ただし,村落共同体の空洞化による水管理の困難性は,溜池地帶(東播)よりも河川地帶(西蒲原・明治用水)の土地改良区において著しいという地域差がみられる。第2点は土地改良事業が広域化したことによって,農業水利施設の公益的機能の付与と都市的土地利用の進展との対応が必然化していることである。
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