研究概要 |
平成4年度は新たに信濃川下流部の新潟県西蒲原土地改良区を対象として、土地改良事業が広域化したことによる農業水利施設の公益的機能と都市的土地利用の進展との対応関係について実態分析を行なった。 この研究対象とした西蒲原土地改良区の地域特性は、水害と地盤沈下による洪水との闘いで知られる輪中地形の性格をもっているといったらよいと思われる。 平成4年現在、西蒲原土地改良区は、区域面積19,850ha、組合員が14,500名を有するわが国で最大の規模の土地改良区である。この土地改良区は、これまで新川農業水利事業(第1・2期)、鎧潟干拓建設事業、西蒲原排水農業水利事業、西蒲原用水土地改良事業など、主として一連の排水改良を中心とする国営事業(付帯する県営事業)によって造成された水利施設の維持管理を担当している。西蒲原土地改良区の維持管理費の分析の結果、近年、揚排水機の経常的支出が著しく増大していることを把握することができた。 その原因は、西蒲原土地改良区が輪中地形という地域性を有するがゆえに、輪中を囲んでいる自然堤防部の新潟市・燕市など関係12市町村の都市化による輪中内への排水増に起因するものであると考えた。西蒲原土地改良区は、水利施設の管理を行なっている上に、都市廃水による経費負担という不利益に対応して、員外賦課を実施している。わが国でも、余り実例をみないが、つまり、都市排水費負担金の徴収をしていることを明らかにした。これは都市および農村間の水利調整の一つの方法であると評価することができる。 本研究対象の土地改良区の維持管理方式は、これまで技術的操作の問題とされてきたが、実は経済問題であり、以上のような土地改良事業の経済的効果を実現するための手段であることを指摘することができた。
|