1 平成元年の学習指導要領改訂は、社会の変化を反映して、昭和40年代に続く消費者教育の第2高揚期をもたらした。だが、今日の消費者教育重視は、昭和40年代に学校教育に登場した「消費者保護」学習の単なる継続ではなく、新段階と言うべき性格をもつ。何よりも消費者の自立が強調され、単なる消費者というより主体的に生活する人間という総合的な視点からの教育が要請されていること、環境教育にみられるように複数教科にまたがる教育の意義が見直されつつあり、消費者教育の教育課程における明確な位置付けに取組むべき時期を迎えていることなどと併せて、消費者教育のいわば公理たる消費者主権論への再考(消費者余剰のパラドックス)を通して消費者教育の主旨を、社会的、文化的な背景を意識しながら、実践的な観点から明らかにした。 2 主として米国及び英国における消費者教育推進への具体的な指摘、米国における消費者教育・経済教育の具体事例、英国におけるクロス・カリキュラ・テーマのもつ意味などの検討を通して、我が国における新たな消費者教育展開の実践的な視点と手だてを明らかにした。 3 消費者教育を実践する前提を探るため行った児童生徒の意識調査を踏まえつつ、消費者支援センターにおいて小・中・高等学校における海外教材を生かした消費者教育・指導事例(家庭科及び社会科)の作成に取り組んだ研究委員会を運営し、複数教科にまたがる消費者教育の統合契機として、合理的な意思決定過程の学習の重視、消費者としての“生活の哲学"への自覚を深める学習の重視、座学を排して手足を使った活動、経験の重視を確認した。
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