フタル酸ジオクチル投与により増殖し肝ペルオキシソ-ムの正常への復帰過程にロイペプチンを作用させると、多数のオ-トファゴソ-ムが蓄積する。この実験系を用いてオ-トファゴソ-ムの形成と標的オルガネラを取り囲む分離膜の起源について検討し、以下の知見を得た。 【形態学的知見】 (1)ロイペプチン注射後20分、肝細胞にペルオキシソ-ムを取り囲む多数の二重構造の膜(分離膜)が出現する。その終端は粗面小胞体や滑面小胞体に直接連続している。(2)分離膜の出現にさきがけてペルオキシソ-ムを取り囲む有窓性の滑面小胞体が現われるが、分離膜の出現と共に消失する。これは分離膜が滑面小胞体の窓が閉じることによって形成されるものと思われる。(3)初期オ-トファゴソ-ムの二重膜の内膜は、はじめ狭められていた外膜との間隙が拡大してから消失する。 【酵素細胞化学的知見】 (1)分離膜は小胞体のマ-カ-酵素には陽性であるが、他のオルガネラのマ-カ-酵素群には陰性である。(2)初期のオ-トファゴソ-ムは酸ホスファタ-ゼに対して陰性であるが、時間を経るにつれて陽性になる。 【免疫電子顕微鏡学的知見】 (1)分離膜および初期のオ-トファゴソ-ム膜はリソソ-ム膜蛋白を持っていない。しかし、時間を経るにつれてそれを獲得する。(2)リソソ-ムのプロテア-ゼについても同じ結果である。(3)プロテア-ゼは既存のリソソ-ムがオ-トファゴソ-ムに融合することによって供給される。 以上の結果は分離膜が小胞体膜に由来すること、分離膜の取り囲みでできたオ-トファゴソ-ムははじめ全くリソソ-ムの性質をもっていないが、既存のリソソ-ムと融合することによってリソソ-ムの性質を得てオ-トファゴリソソ-ムとなり、内容物を分解することを示している。
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