研究概要 |
自食作用は細胞の重要な生命活動の一つであるが,多くのことがまだ解明されていない。この研究は自食作用の過程を明かにする目的で行なわれた。薬物投与により増殖したペルオキシソームが正常数に復帰する過程にロイペプチンを作用させると,肝細胞に自食胞の蓄積がおこる。ロイペプチン投与後,20分には細胞小器官を取り囲んで迷入する膜が現われる。電子顕微鏡観察からこの膜が自食胞を形成することが判明した。この膜を自食胞分離膜と呼ぶことにし,その形態的特徴を検討すると共にその性質を酵素細胞化学的および免疫細胞化学的に検索して次の結果を得た。 分離膜は間に槽のある二層構造をもち小胞体と類似しているが,槽の幅が狭い。自由端はしばしば粗面小胞体に連続している。酵素細胞化学的には各細胞小器官のマーカー酵素のうち小胞体のもののみが分離膜に検出された。免疫細胞化学的にも分離膜は小胞体の酵素に陽性であった。これらの結果は自食胞を形成する分離膜は小胞体膜に由来することを示す。 次に,初期自食胞がリソソーム酵素や膜蛋白をどのように獲得するのかが検討された。ロイペプチン投与後40分や60分の肝細胞をリソソーム酵素や膜蛋白ついて免疫細胞化学的染色すると,反応陰性の自食胞が反応陽性のリソソーム顆粒と融合している像が多数見られた。これらの結果は自食胞ははじめリソソーム酵素を持っていないが,既存のリソソームと融合することによりその酵素や膜蛋白を獲得することを示している。 以上の結果から自食胞を形成する分離膜は小胞体に起源し,初期の自食胞はリソソームの性質を持っていないが,やがてリソソームと融合して後期自食胞(自食リソソーム)となり,取り込んだものの消化を起こると結論される。
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