前年は自食胞分離膜の起源とその形態的および酵素細胞化学的特徴を研究した。今年度は分離膜の免疫細胞化学的特徴と自食胞から自食リソソームへの変換の機構について研究を行ない。次のような事実が明かとなった。 1)自食胞分離膜はその形成の初期には小胞体固有の抗原に対して陽性であるが、リソソームの酵素やその膜蛋白に対しては全く陰性である。 2)分離膜槽の膨化が始まると、小胞体抗原は徐々に消失する。この時期の自食胞はリソソーム酵素やその膜蛋白についてはなお陰性である。 3)ロイペプチン投与後40分から60分に、この陰性の自食胞がリソソーム酵素やその膜蛋白に陽性のリソソームと融合している像が頻繁に見られる。 これらの結果は自食胞分離膜は小胞体に起源し、分離膜に囲まれてできた初期自食胞はリソソームの性質を持たないが、やがて既存のリソソームと融合し、リソソーム酵素や膜蛋白を獲得して、後期自食胞(自食リソソーム)に変換する。そこではじめて取り込んだ細胞小器官の分解が起こる。
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