カーボンナノチューブは飯島博士の発見以来、その特徴的な電気特性及び形状により各分野の研究者から高い注目を浴びてきた。また、ナノチューブは溶液中で孤立分散することによって人体を透過する近赤外光を励起波長に持つ蛍光を発することから、新規バイオセンサーへの応用が期待できる。本研究ではナノチューブの特異的な蛍光を用いたバイオセンサーの開発を目的として、糖鎖高分子-ナノチューブコンジュゲートを作成し、各スペクトルとAFMによってその評価を行った。 α-グルコース糖鎖高分子の水溶液中で未精製カーボンナノチューブ(HiPco)を超音波処理後、黒色の分散溶液を超遠心処理により不純物等を除去し、糖鎖高分子-ナノチューブコンジュゲートを含む上澄み溶液を得た。得られた溶液のラマンスペクトル及び吸収スペクトルによって孤立分散しているコンジュゲートの存在が示唆された。近赤外蛍光スペクトル測定の結果、孤立分散ナノチューブ由来の蛍光スペクトルが得られた。またAFM測定により、高分子のらせん構造に起因すると考えられるラフト構造がナノチューブ上に観測された。これらの結果から、コンジュゲートは糖鎖高分子がナノチューブに巻き付くことによって水中に分散していると予想した。上記の方法によって、α-グルコース糖鎖高分子のみならず他の生理活性糖鎖高分子(志賀毒素を中和するGb_2及びGb_3糖鎖高分子、肝細胞の培養に用いられるPVLAなど多数)によっても同様のコンジュゲートを得ることに成功した。
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