長基線ニュートリノ振動実験に於ける物質効果の不定性、特に物質密度分布の作る不定性について系統的に論じた論文二編を出版した。本研究では先ず物質密度分布をフーリエ展開し、その最低次(0次)と1次の効果が全物質効果の中で主要な影響をもつ事を示し、次にそれら第0次及び第1次のフーリエ係数の間に相関がある事を数値的解析的に示した。この相関は非常に広い基線長領域(7500km程度迄)に於て、ほぼ全てのエネルギー領域で存在する。また一般に平均物質密度を高い精度で知る事は可能であるが、基線上の物質密度分布を正確に知る事は大変難しく第一フーリエ係数は容易に100%程度の誤差を持ち得る。これらの事実より此迄平均密度分布とその誤差のみを考慮して解析が行われてきた3000km程度の基線長の振動実験に於いて、密度分布とその誤差を組み入れる必要性を示した。併せて、以上の事情により、レプトンセクターのCP非依存性の観測に最適な実験設定は1500km程度のやや短い領域になる事も示した。 また、現在、ニュートリノ振動実験を用いたフレイバーの破れの観測について、及び、線形加速器実験に於けるフレイバーの破れたヒッグス崩壊過程について、の二編を作成中である。
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