研究課題
オーストラリアの調査はニューイングランド褶曲帯・ラクラン褶曲帯に対して行なわれた。ニューイングランド褶曲帯は調査地域を北方および北西方に延長することによって、変成岩類の分布がより正確に把握でき、T_<1A> COMPLEXを基準にして岩相の同異を明らかにできるようになった。この結果、研究者の判断の違いによって古生代の構造発達史に混乱をもたらしていたと思われる部分を統一的に説明できる可能性がでてきた。またT_<1A>花崗閃緑岩の岩相の違いをより詳しく検討し、マイロナイト化の影響が大きいことを明らかにした。これはRb-Sr系の同化体の挙動を明らかにする上で基礎となる成果である。ラクラン褶曲帯の調査はカンブリア紀オフィオライトとされるものが見かけの上位〓と「整合」と考えるには露出が十分でないことが判明したし、日本の付加体研究の成果を参考にすれば、層序について再検討が必要であることが明らかとなった。またオフィオライトの一部に比較的高い圧力/温度の変成作用を受けた証拠があることが今回の調査の中で明らかになった。以上のラクラン褶曲帯に対する知見は古生代の構造形成史の見直しを求めるものである。さらに同褶曲帯産の放散虫化石はオルドビス紀早〜中世のものが含まれている可能性が出てきた。またこの化石はコノドント・筆石とも共存する点で古生態学上興味深い。オルドビス紀におおわれていると見られた変成岩は360〜430Maの若い同位体年代(齢)を示すことも明らかとなり、構造解析上の問題を投げかけた。ニュージーランドの調査では次年度調査地を限定する上で有効な調査結果を得ることができ、グレノーキーの蛇紋岩メランジ,オニカカ片岩の構造・年代論を検討することで、タスマン海オープニング以前の縫合帯復元の重要な手がかりを得られること、またニューカレドニアが重要であることが判明した。
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