研究課題
全体としては、ほぼ予定通りに進捗している。即ち、本研究は全体計画が百年がかりの、その基礎台帳を作成するという性格の研究であるが、第一年度は更にその基本部分作成のために全精力を注ぐ必要があり、分担者が個々に分担部分の調査の拡充に努めている段階である。従って、個々の分担部分の難易度を調整しないままでの総括になるが、第一の目標に掲げた、近世初期に刊行された古典籍(室町以前の成立作品)の伝本書目作成については、寛文7年まで(最終目標は元禄末)の分の基礎台帳が作成された。既刊の個別作品毎の伝本研究の研究書・論文の収集・整理、また、文献資料部所蔵の書誌調査カードの抽出整理については、作品毎にムラがあるが、前者については7割方、後者はやや遅れて6割の達成度である。しかし、いずれも当館・当部内の資料で処理可能であり、第二年度で補充して行く心算である(館外での調査を優先させていることに主たる原因があり、補充は次年度でも因難ではない)。原本所蔵者を訪ねての出張調査は、閲覧拒否の個所も若干あるが、今年度分については、岩国徴古館を初め各地所蔵者分を調査・収集した。本研究については、予想通り原本で確認しなければならない作業が多い。そのために最低必要限の資料として詞花集・建保名所三百首など写本・版本数点を購入した。また、今回の調査のあらゆる分野に関わる資料として、東北大学図書館狩野文庫本のマイクロ化が実現した折でもあり、その語学、文学部門111リールを購入した。来年度調査に入る前の準備段階で活用する次第である。