研究課題
近時、外国人、とりわけ在日外国人による犯罪が社会問題化しているが、言語、文化、風俗、習慣を異にする外国人による犯罪の分析、外国人被疑者、被告人、受刑者に対する取扱い上の問題点の検討が、ひいては、わが刑事司法の持つ特徴と問題点の解明につながると認識の下に、外国人犯罪の現状を分析・検討し、解釈論的、立法論的提言を行うことを目的として研究活動を開始した。2年計画の初年度にあたる本年度においては、以下のような成果を得ることができた。(1)外国人犯罪及びその処理をめぐる従来の研究状況を総覧して、個別的な検討を要する問題点を抽出し、各研究分担者がこの個別テーマを選択して研究を開始した。(2)2回にわたる全体研究会を開催し、研究分担者が既に研究を遂げたテーマにつき報告を行い、全員で討議した。このほか、国際人権法の専門家を交えた研究会も行った。(3)国内、国外の関係文献・統計等各種資料の組織的収集・整理に着手し、相当量の収集を遂げた。これをコンピュータを用いて整理・処理しデータベース化して共通の研究補助手段とする作業が進行中であり、その一部は、既に研究分担者に配布された。(4)外国人犯罪の問題の原点とも言える沖縄地方の裁判所、刑務所を訪問し、事情聴取を行うとともに、米軍の刑務所を訪問し、軍人、軍属による犯罪の処理状況につき有益な知見を得た。また、出入国管理・難民認定法の退去強制との関係で長崎県の大村入国者収容所を訪問し、事情聴取を行うとともに、その機会に、北九州地方における外国人犯罪の実情につき司法関係者に事情聴取を行った。次年度は、本年度実現されなかった法務省国際課、警察庁、東京地裁の事情聴取、また、横須賀、府中の各刑務所等の訪問が予定されている。