鋼構造部材の破壊が、初期延性亀裂の発生、亀裂の進展、最終脆性破断の3段階からなることに基づき、先ず、初期延性亀裂の発生クライテリアについて基礎的な実験を行なった。ただし、実験条件は建築構造物における破壊の条件、つまり破断面およびその周辺が全塑性状態にあること、亀裂が溶接止端などの鋼材表面におけるひずみ集中部から発生すること、を再現するように計画実行した。これにより、1)延性亀裂発生ひずみはひずみ集中部の切欠き形状にほとんど依存しないこと、2)延性亀裂発生ひずみは寸法の影響をほとんど受けないこと、3)延性亀裂発生ひずみは鋼材の固有の特性である一様伸びとほぼ一致すること、4)上記の3項目は建築で使用される軟鋼(40キロ鋼)から高張力鋼(50、60、80キロ鋼)の範囲で成り立つこと、という重要な知見が得られた。 また、破壊現象を伴う部材を含んだ構造システムの地震に対する安全性を評価するために、地震応答解析を行なった。これにより、柱が脆性破壊するような場合には、建物のある特定階の柱が次々と連鎖的に破壊する現象が数値的に再現された。このような脆性連鎖破壊を防止するためには、構造物の強度を通常より高めておく必要があることを定量的に明らかにした。 上記の一部は既に公表済みであり(11.研究発表を参照)、その他については現在建築関係の論文集に投稿中である。
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