本研究は、世界(国際社会)と日本国内の双方で、工業化の観点からみた先進地域と後進地域の関係は、従来とは大幅に異なる様相を呈している。本研究では、これを社会システム発展におけるロケーション・ラグ効果とよび、一般的レベルでは、国内・国際間でパラレルに捉え、社会経済的指標を用いて、計量的に実証することをめざした。しかし、研究に着手してみると、国内・国外ともに通時的データの欠損により、多くの既存の分析モデルの採用が不可能になってしまった。このため、経済システム、政治システム、生活(文化)システムの間の発展上のラグを、ダニエル・ベルの言う「文化的矛盾」等の概念によって位置づけ、下位システム間のコンフリクトの態様を類型化するという手法を用いることにした。この方法によれば、多くのデータは不備地域(国)をも対象として捉えうることが明確になった。各地域システムにおける、サブシステム間の発展ラグの状況の分析は、地域(主として県単位)別に、工業化重点地区とその圏域、圏外域を、経済(産業)データをベースにして、隔年毎の変化マトリクスを作成し、分析した結果、経済、文化、生活の都市化、価値観などの間に、発展の足並みのズレが生じてきていることが見てとれた。このズレのパターンと各県のロケーション(大都市や重点工業化地域との位置関係)を対応させて、ラグ効果分析を行ってきた。ただし、国際モデルについては、困難が多く、遅延の原因は、データ収集法の国際間での違いによるものであった。 しかし国際関係における地域間ラグ効果分析を中心に行うため、分析内容としては、経済システムラグ、政治システムラグを一応現時点までで完了したものとし、生活システムラグを中心とした。 方法としては、生活の質関連データ(社会指標:消費、保健・医療、労働、教育、余暇、住宅、安全、環境保全)について、日本・韓国・台湾・タイ・フィリピンなど、アジア諸国間の類似指標を収集し分析するマクロデータ分析と、人々の生活満足に関する比較意識調査を計画したが、比較意識調査については、専門家へのヒアリングで代替し今後、実調査を行う際のコンセプト・リサーチとした。
|