研究分担者 |
伊藤 洋一 東京大学, 法学部, 助教授 (50201934)
山下 友信 東京大学, 法学部, 教授 (10107485)
石黒 一憲 東京大学, 法学部, 教授 (00009854)
能見 善久 東京大学, 法学部, 教授 (50009841)
松下 満雄 東京大学, 法学部, 教授 (00103929)
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研究概要 |
EC法の重要性が増大の一途を辿っている中で,各分野の専門家による意見交換の場としてヨーロッパ法研究会を発足させることができたのは大きな収穫であった。同研究会報告等によって得られた知見の要点のみをまとめれば,以下の如くである。 1.植木俊哉助教授(東北大学)から,「国際法から見たEC及びEC法」と題する報告をしていただいた。同助教授は,EC法研究に際して従来採られてきた主要なアプローチを,比較法的アプローチ,実体法的アプローチ,国際法的アプローチの三つに区分した上で,最後のもの,特に国際組織法的アプローチの有効性を,EEC条約に対するウィーン条約法条約の適用を例にとりつつ主張された。しかし,この主張に対しては,伝統的な国際組織法の枠組にECが収まると言えるかにつき,EC法の独自性を重視するメンバーとの間で活発な応酬が交わされた。この議論は,EC法研究の視角に関する重要な論点を明らかにしたと言えよう。 2.また,EC競争法に詳しい弁護士で,ヨーロッパ大学(ブリュージュ)の講師でもあるIvo Van Bael氏から,(1)ECにおける国家補助(State Aids),(2)EC合併規則の概要と最近の施行状況,(3)EC独禁法遵守計画に関する合計3本の報告をしていただいた。まず,上記(1)は,加盟国の企業に対する多様な補助形態がECレヴェルでどのように規制されているかを扱うものであり,一国の産業政策へのEC委員会の介入とその限界が注目された。(2)は,EC統合の進展にも拘らず制定が遅れていた,EC合併規則の最近の施行状況を見るかぎり,比較的緩やかな運用がなされていると言えること,しかしかかる運用状況が今後も継続するかは予断を許さないことが明らかにされた。(3)は,EC競争法の重要化に伴う,企業側の対策を扱うものであり,ヨーロッパ単一市場の成立が,日本企業にとっても重要な関心事となったことを印象づけることになった。
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