研究分担者 |
伊藤 洋一 東京大学, 法学部, 助教授 (50201934)
山下 友信 東京大学, 法学部, 教授 (10107485)
石黒 一憲 東京大学, 法学部, 教授 (00009854)
能見 善久 東京大学, 法学部, 教授 (50009841)
松下 満雄 東京大学, 法学部, 教授 (00103929)
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研究概要 |
1992年末のヨーロッパ域内市場完成を契機として,日本においてもにわかにEC統合ブームが起こり,いくつかの学会においてもEC統合がテーマとされた.しかし,日本におけるEC法研究は,少数のパイオニアにより細々と行われてきたのが実情であった.このような事情を反映し,マ-ストリヒト条約批准の難航に象徴される統合ム-ドの冷え込みとともに,学界におけるEC統合ブームも急速にしぼんでしまったように見える. 本研究は,1991年度から東京大学法学政治学研究科において「ヨーロッパ法」が開講されたことを背景として,継続的且つ本格的なEC法研究の端緒となることを狙ったものであった.そのためには,長期的な視野のもとに,EC域内市場統合という継続的な過程を,一方でECと加盟国との関係において,他方でECとGATT等の国際関係において検討し直すことがまず必要であるとの認識に立ち,1992年統合を点としてではなく,総合的なプロセスとして捉えることに留意しつつ,研究分担者の問題関心に従い,各領域に関する分析を行った.ここで個別的内容について立ち入ることはできないが,本研究の成果としては,第一に,EC統合,統合への球心力と国家主権維持という遠心力との,時期により異なるバランスの上に推移しており,1992年域内市場統合というキャッチフレーズには集約しえない,長期的且つ複雑なプロセスであることを,特定領域に関して実証したこと,第二に,基本的なECの制度の訳語選定にあたり,日本におけるEC法研究のアプローチに関する問題を認識するにいたったこと,第三に,EC内部の動きを世界的なハ-モナイゼーションの過程とパラレルに捉えることの必要性を認識するに至ったこと等をあげうる. EC統合は,当分の間終わりのないダイナミックなプロセスであって,今後とも,その推移を研究し続けることが不可欠であることを最後につけ加えておきたい.
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