研究概要 |
有料老人ホーム・湯河原ゆうゆうの里について入居者及びケアスタッフについて克明な面接調査・観察調査・質問紙調査を行ない,その結果の一応のまとめを平成6年2月に完成させた。その中心的な成果は,(1)有料老人ホーム入居者は同じ年齢の在宅老人との疾病の状況はごく近似していることが分かった。従ってこれらの調査はたんに有料老人ホームの建築設計とケア提供の基礎資料となるだけでなく,在宅老人に関わるそれらの基礎資料にもなりうることが分かった。(2)高齢者の疾患や心身障害の発現率,およびそれに対応する建築的・用具的支援と人的支援の必要性を5歳階級別に明らかにすることができた。このこともまたいかなる居住環境についても,当該老人グループの現在および将来の年齢構成をふまえて,現在から将来にかけて関係する住環境の物的改造の必要性,バリアフリー住環境へ転居を必要とする老人グループの規模,老人に対して必要とされる人的ケアの種類別規模などを詳細かつ具体的に明らかにするための基礎的資料になりうることが分かった。例えばすべての階へエレベーターと階段の双方でアクセス可能な住環境において,69歳未満の老人は約75%が階段を利用しているが,5歳加齢するごとに60%,45%,45%と減少し,そして80歳以上の超高齢者グループでは20%にしかならないことが分かった。通院,視力,聴力,屋内歩行,居室歩行,外出一般,入浴,排泄,調理,家事などのカテゴリーについても同様に物的・人的生活支援の必要度を5歳階級別に明らかにした。これらの数値は老人が住む住宅の物的改造及び老人のバリアフリー環境への転居についての詳細なプログラム作成に活用することができるだろう。
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