研究概要 |
雲仙火山周辺の地震活動は,島原半島〜千々石湾の活動と普賢岳山頂部の活動に分けられる。このうち,山頂部の地震活動は溶岩ドームの出現・成長に対応して活発化しており、溶岩湧き出し口近傍における微小破壊であると推定される。一方、半島西部〜千々石湾の地震活動は,噴火前から活発化し溶岩噴出とともに沈静化したことから,地下におけるマグマの畜積・上昇等との関連が考えられる。また,3次元速度構造の研究でも,雲仙火山地域の地下数km〜10数kmにマグマの存在を示唆する低速度域が見い出されている。これらのことから,我々は半島西部〜千々石湾の地震群に注目し,これらの震源の再決定を行って高精度震源分布を得るとともに発震機構を調べて以下の特徴を明らかにした。 (1)千々石湾内の震源は円弧状に分布している。太田一也は温泉泉質分布や重力異常等から千々石カルデラを提唱しているが,本結果はそれを支持するものとなった。 (2)半島西部の地震は,2〜3枚のほぼ垂直に立った面上で発生しており,その下限は東へいくほど浅くなっている。また,測地測量で明らかになった溶岩噴出後の減圧源は,ほぼこの下限に一致する。 (3)これらの地震の発震機構は,南北張力が卓越しており,広域応力場に矛盾しない。 以上の特徴から,今回の噴火をもたらしたマグマ溜りは千々石湾下のカルデラ内にあって,ここから普賢岳へ向って斜めに上昇したと考えるのが自然であろう。また,地震活動は,マグマ溜りやマグマ上昇経路の直上で,マグマの余剰圧に起因する間隙圧の増大によって誘発されたと考えると,発震機構や発生推移を矛盾なく説明できる。
|