研究概要 |
平成5年度では、主に地震波形の解析によって,平成4年度の研究で推定されたマグマ溜まりの位置と上昇経路をさらに検証するとともに,溶岩ドームの形成・成長にともなって発生する地震と地殻変動の観測から、溶岩の湧き出し口近傍でのマグマの挙動を解明することをめざした。 溶岩ドーム出現以前に活発であった高周波地震の高精度震源分布や地殻変動データから,千々石カルデラの深さ10数kmにマグマ溜まりがあって,マグマは普賢岳に向かって東方に斜めに上昇したと推定される。そこで,地震波の減衰を調べ、これを検証した。その結果,われわれの推定したマグマ上昇経路付近を通過する地震波には,S波振幅の顕著な減衰と波形包路線の紡錘形化が認められた。 一方,溶岩ドーム出現後は普賢岳山頂部のごく浅所で地震が多発しており,溶岩ドーム近傍の山体の地殻変動をともなうこともある。われわれは,溶岩ドーム近傍に地震観測網を展開することによってこれらの震源を精度良く決定し,溶岩ドームの空中観察や地殻変動観測データとあわせて,地震および地殻変動の発生機構を検討した。その結果,これらの地震および地殻変動は,火道からのマグマの突き上げによりドームを構成する溶岩ブロックや火道壁がスティックスリップをおこしながら外側へ押し出されることによって発生したと推定される。 以上のように,本研究によって雲仙火山の噴火活動をもたらしているマグマの位置・上昇経路や出口近傍での挙動について重要な知見を得ることができた。今後は地震波の減衰等により定量的に調べるとともに,今回見いだせなかったマグマ上面からの反射波の検出を試みていきたい。
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