研究概要 |
[PbI_4]層が一層からなる(C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4の光学特性,特にその三次非線形性を中心に研究を進めた。また,三次元類似物質である(CH_3NH_3)PbI_3も含めた一連の物質についての光学測定もおこない,[PbI_6]八面体のネットワークの様子(次元性)と光学特性の関連についても調べた。 1.(C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4についてナノ秒パルスレーザを用いて縮退四光波混合の測定をおこなった。励起子吸収に一光子共鳴するエネルギーでχ^<(3)>(-ω;ω,-ω,ω)は共鳴的に増大し,そのピーク値は室温で6×10^<-4>esu,77Kで2.4×10^<-3>esuにも達した。この値はTHGで得られたχ^<(3)>(-3ω;ω,ω,ω)(〕 SY.simeq. 〔)10^<-9>esuと比較すると桁違いに大きく,誘電率閉じこめ効果による非線形性の増強を反映している可能性がある。 2.(C_6H_<13>NH_3)_2PbI_4と(C_<10>H_<21>NH^3)_2PbI_4についてフォトルミネッセンス励起スペクトルの測定を初めておこなった。励起子吸収の高エネルギー側に見られる吸収の肩の部分ではっきりとした発光効率の増大が観測されたことから,これがバンド端の吸収に対応しているものと思われる。 3.[PbI_6]八面体ネットワークの形態の異なる各物質の光学スペクトルをそれぞれ測定し,その励起子エネルギーの変化を説明するために簡単なモデル計算をおこなった。その結果,ワニア励起子的な描像では一連の物質の励起子エネルギーの差をうまく説明することができず,フレンケル励起子を基本にしたモデルではかなりよく実験結果を再現できることがわかった。 以上の研究を通じて,これらの自然量子井戸物質では励起子は極めて局在性の強いフレンケル励起子的な振る舞いを示すこと,また,その励起子エネルギーに共鳴する領域で異常に大きな非線形光学応答を示すことが明らかとなった。今後は,この巨大なχ^<(3)>の起源を明らかにするために,時間分解のパンプ・プローブ分光などをおこなっていく予定である。
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