研究概要 |
本研究では,過疎化.高齢化が進行する中山間地域農山村の保全と活性化を目的として,以下のような観点から調査・研究を行った。 1.過疎化の進行と土地管理および農地災害:愛媛県内におけるいくつかの市町村について農地災害の状況を比較検討し,過疎化地域では農地単位面積当たりの災害が多く,また小規模な災害の多発していることを明らかにした。 2.土地利用の変化と流域特性:過疎化に伴う農林地の荒廃,あるいは中山間地域活性化のための農地開発等は,流域の諸特性を変化させ,その結果,流域の水循環特性に大きな影響を与える。そこで,ここでは農地造成を事例として,土地利用の変化が地被・土壌・その他の流域特性にどのような影響を与えるのかについて検討するとともに,土壌保全の立場からリルの生成メカニズムについて調査・解析を行った。 3.土地利用種と流出特性:ここでは,土地利用種によって流出特性がどのように異なるかを比較・検討して,農林地が流域保全に果たす役割について考察を加えた。その結果,山林地に比べて造成農地のピーク流量および直接流出量が大きいこと,一方,棚田地帯のピーク流量は増大するが,直接流出量は大差のないことが明かとなった。また,造成農地と山林地の渇水流量について比較したところ,多雨年では山林地の渇水流量が大きいが,寡雨年ではこの逆の現象が発現することを示した。そして,これは蒸発散特性の差異によるものであると判断された。さらに,水田地帯における水収支観測等を行い,水田が地域の地下水位安定に重要な役割を果たしていることを定量的に示した。 4.中山間地域保全と新たな流域の創造:とりまとめとして,本研究での調査・解析結果に基づき,今後の中山間地域保全の方向性と新たな流域概念について提言を行った。
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