研究概要 |
施設園芸においては,露地とは異なる降雨遮断型の環境下で多肥料投入・連作状況にある施設特有の土壌障害が生じており,これらに対処するための高精度な土壌生産持続限界を評価する管理モデルの策定を目的としている。本年度は,実際施設の現況分析として,栽培利用年数の異なる施設において最近栽培作物の生育不良が続いているハウス内土壌について,その物理性,化学性としての土壌内のイオン組成,集積塩類捕集法およびこれら計測法についての検討を行った。とくに,土壌水溶性イオンについてイオンクロマトグラフィーによって定量分析を行い,以下の結果を得た。 土液比1:5の土壌の水抽出液(平衡液)中陽イオン,陰イオン種の溶存量分析の結果,Ca^<2十>,Mg^<2十>,K^十の陽イオン,SO_4^<2->,NO_3^-,C1^-の陰イオンは,ハウス利用年数によって大きな差がみられた。各イオン濃度の地中深さ分布では,表層から深さ25〜30cmまではどのハウスもきわめて濃度が高いが,下方では塩類が蓄積されているために利用年数が長くなるにつれて明らかに高濃度を呈している。これら塩類集積対策として,試験中に実施された湛水陽熱処理の効果については,リーチング・陽熱処理後,陽イオン,陰イオンともに洗脱が認められる。とくに表層の塩類が下方に押し流されていることが明らかであった。しかし,1カ月後には再び表層付近での塩の集積が始まっていた。イオン組成については,陰イオンに占める硫酸イオン,硝酸イオンの割合がきわめて多い。土壌抽出液の陽イオン(K^十十Ca^<2十>十Mg^<2十>)と陰イオン(NO_3^-十SO_4^<2->)の比は,どの場合も1:1に保たれていた。
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