研究概要 |
施設園芸においては,露地とは異なる降雨遮断型の環境下で多肥料投入・連作状況にある施設特有の土壌障害が生じている。本研究はこれに対処するための土壌生産持続限界を評価する管理モデルの策定を目的としている。本年度は,栽培利用経過年数の異なる野菜栽培温室土壌についてイオンクロマトグラフィーによる土壌水溶性イオンの定量分析,その経時変化からのハウス土壌の利用可能年数に関する簡易シミュレーション,ハウス土壌表層に集積する塩類捕集に関する実験ならびに土壌内水分・塩分移動に関する数値シミュレーションを行った。 ハウス土壌の化学性分析およびイオン分析より,(1)土壌試料懸濁液と水抽出液におけるEC値はほぼ一致し,溶液中の各イオン濃度も等値と考えられた。(2)EC値,Ca^<2+>,Mg^<2+>,K^+の陽イオン,SO_4^<2->,NO_3^-,Cl^-の陰イオンと土壌の栽培利用年数との間に高い相関があり,分散分析の結果,各々の成分につき5%水準で有意な差が見られた。(3)先のEC,陽イオン,陰イオンについて栽培利用期間における年変化量を求め,塩類の浸透作用と特定イオン作用の観点からハウス土壌の利用可能年数の推定を試みた。簡易計算結果とイオン濃度による作物生育阻害限界との整合性についてなお検討を重ねる必要がある。(4)ハウス土壌表層に集積する塩類について,新たに塩類捕集シートを開発し,実験室レベルで粘土含有率による土性の相違ならびに乾燥環境条件の影響を考慮した塩類捕集基礎試験を行った。捕集シート利用時の土壌内水分分布状態ならびに塩類の集積・捕集機構が明確になった。(4)土壌内の水分および塩分移動を非定常・等温・1次元の輸送方程式で記述し,主に土壌水分分布について数値解析を試みた。
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