神経内分泌によるヒト消化管局所免疫機構の制御に関する研究ーその異常と免疫性腸疾患

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04454178
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 名倉 宏 東北大学, 医学部, 教授 (90022821)
• 研究分担者: 樋渡 信夫 東北大学, 医学部, 助手 (00133950) ; 佐々木 巌 東北大学, 医学部, 講師 (60125557) ; 笹野 公伸 東北大学, 医学部, 助手 (50187142) ; 大谷 明夫 東北大学, 医学部, 助手 (30133987) ; 木村 伯子 東北大学, 医学部, 講師 (80142975) ; 増田 高行 東北大学, 医学部, 助教授 (00113910)
• キーワード: 粘膜免疫 / 細胞接着分子 / ニューロペプチド / VIP / サブスタンスP / エンドセリン / 免疫組織化学 / 潰瘍性大腸炎

研究概要

本研究は、研究代表者による「消化管におけるmucosal immune systemとその制御機構に関する研究」の一環として、神経内分泌系による制御機構の解明と、その異常に起因するといわれている潰瘍性大腸炎を中心とした免疫学的機序による炎症性腸疾患の病因との関連を明らかにすることを目的に遂行されている。本年度までに 1)ヒト大腸粘膜固有層に分布する血管系内皮細胞の形態とそれに発現している細胞接着分子群が、潰瘍大腸炎では著しく変化し、immunoglobulin gene superfamilyおよびselectin familyに属するそれらの発現と増強、および間質や血管内腔への分泌像を観察し報告した。この現象は粘膜における炎症の維持と進展に主要な役割を果たしいてるものと考察した。2)ヒト消化管における神経ペプチド含有神経の分布と、炎症性腸疾患における異常を免疫組織化学的に明らかにした。潰瘍性大腸炎粘膜では1)で観察した血管増生を伴う部分ではニューロペプチド含有神経が著増し、陰窩膿瘍を伴う場合には著減と消失が観察され、本疾患の病変の遷延化との関連を示唆した。3)ニューロペプチドのうちVIPは形質細胞からのIgA分泌を抑制し、substancePで増強されることを確認し、またsubstancePは1)で観察された血管系(high endothelial venule)からの好中球やリンパ球のmigrationを促進している。4)血管作動性ペプチドであり、近年その免疫制御能が示唆されているエンドセリン-1が腸管粘膜上皮細胞間の内分泌細胞マクロファージおよびVIP神経に共存し、胃ではガストリン産生細胞にも存在することを初めて観察、報告した。以上のように腸管粘膜におけるmucosal immune systemは血管、神経内分泌系と密接な関連の許で機能していることがより鮮明となった。

研究成果

• [文献書誌] H.Ohtani,N.Hiwatashi,H.Nagura: "Light and electron microscopic immunolocalization of endothelial leucocyte adhesion moleculeー1 in inflammatory bowel disease" Virchow Archiv A Pathol.Anat.420. 403-409 (1992)
• [文献書誌] H.Ohtani,H.Nagura: "Identification of type I collagenーproducing cells in human gastrointestinal carcinomas by nonーradioactive in situ hybridization and immunoーelectron microscopy" J.Histochem.Cytochem.40. 1139-1146 (1992)
• [文献書誌] H.Nagura: "Mucosal defense mechanism in health and disease.Role of mucosal immune system" Acta Pathol.Jpn.42. 387-400 (1992)
• [文献書誌] N.Hiwatashi,T.Msasuda,H.Nagura: "Immunohistochemical distribution of VIPーcontaining nerve fibers in colonic mucosa from patients with ulcerative colitis" Biochem.Res.13(Supp1.2). 81-84 (1992)
• [文献書誌] H.Nagura,H.Ohtani: "Expression of major histocompatibility class 2 antigens by vascular endothelial cells leads to amplified immunoーinflammatory processes" Acta Histochem Cytochem.25. 653-660 (1992)
• [文献書誌] H.Ohtani,I.Sasaki,H.Nagura: "In Situ expression of cell adhesion molecules (ICAMー1,LFAー1,Macー1,VCAMー1,VLAー4,E and P selectins) in inflammatory bowel disease" Lab.invest.(1993)