研究概要 |
平成5年度において得られた新しい知見は,(1)当該遺伝子cDNA D-1(1029bps)を新しいVector(pMAL)にサブクローニングした結果、D-1がコードする組み換え蛋白のみを精製しうるようになり、その蛋白をマウスに免疫して獲得した多クローン性抗体により、蛋白レベルでのD-1の組織局在が検出可能となった事,(2)In situ hybridizationに従来使用していたcDNAプローブをcRNAに変更することにより、非特異的反応を抑制し、より詳細に遺伝子レベルでのD-1の局在を組織切片上で検討しうるようになった事である。以下に各々の結果につき説明する。 (1)に関して:pMAL Vectorにより産生したマルトース結合蛋白とのD-1融合蛋白をFactor Xaで切断しaffinity chromatographyでD-1蛋白のみを分離。Balb/cマウスに免疫した。得られた血清をE.coli抽出物で吸収した後、パラフィン切片上に応用した。その結果、抗D-1多クローン性抗体は原発巣・転移巣を含め黒色腫細胞膜および細胞質内にD-1抗原の局在を検出した。従って、細胞質内のD-1蛋白抗原の細胞膜表出におけるHLA-class I抗原のhaplotypeやその結合に関する研究が更に必要となった。 (2)に関して:plasmid Bluescript IIに組み込まれたD-1 cDNAをin vitro transcriptionにより、cRNAすなわちriboprobeとしin situ hybridizationに供した。この利点はRNA-RNA結合がより親和性が高いこと,従って更に厳しい条件下で反応を行うことが可能となり、非特異的反応を抑制できる。またsenseおよびantisenseの両probeが作成されるのでcontrol studyがより適切となった事が挙げられる。その結果、D-1 mRNAは極めて黒色腫に限局して存在することが判明し、また主要正常臓器にも、有意の反応がなかったことより、D-1組み換え蛋白抗原のワクチンとしての使用に有用な情報を得ることができた。現在、極く少数存在するD-1(-)の黒色腫患者において、その血清中の抗D-1抗体をマーカーに諸々のBRMでD-1のinductionを検討中である。
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