研究概要 |
ISH(in situ hybridization)法による肺扁平上皮癌の生検標本におけるHPV(human papilloma virus)の検出を試みた。進行癌においてはHPVの検出を認めなかった。早期肺扁平上皮癌に対しては,現在知見を集積中である。 PCR(polymerase chain reaction)法による肺扁平上皮癌の手術標本・生検標本におけるHPV16・18・33型の検出を試みた。進行癌においてはHPV18の検出を12%程度に認めた。早期肺扁平上皮癌に対しては,現在知見を集積中である。 検出感度の問題もあるが,PCR法では若干認められISH法では認められないHPV感染が癌化にどれほど関与しているか不明である。これらのことより進行肺扁平上皮癌では,HPV感染との関与はあまり無いものと考えられた。進行肺癌の手術標本,生検標本に対して同時に施行した癌抑制遺伝子p53の免疫染色では60%以上の陽性率を認めたことから,p53の異常が癌化に関与していることは確かであるが,p53の変異がHPV感染と何らかの関与を持っている可能性は少ないのではないかと考えられた。 以上のことよりHPV感染は,進行肺癌では,子宮頸癌や頭頸部癌における程,その関与を認めないものと考えられた。早期肺癌においてHPV感染がどの程度関与しているかは今後の課題である。また,癌抑制遺伝子p53の遺伝子変異の頻度について,PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism)法で進行肺癌と早期肺癌で比較する予定である。
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