研究概要 |
平成5年度は前年に引き続き臨床的検討として、肝静脈血中の体液性因子と体静脈-肺動脈吻合術後の肺動静脈瘻発症の因果関係を検討した。【対象】対象はFontan型手術術後症例10例で、手術時年齢は2〜19(平均6.9)歳であった。【方法】検査項目は肝機能低下時には低下するProtein C,S、PT,APTT,AT3、TAT,PICなどの止血検査や、T.Bil,GPT,LDHなどの一般肝機能検査及び、グルカゴン、ソマトスタチン、各種growth factorで、急性期症例4例では術前、術後1日、1ヵ月、6ヵ月と経時的に、遠隔期症例6例では術後7カ月から7年平均31ヵ月で検査を行った。【結果】術後急性期にはProtein C,Sいずれも全例で正常下限から正常値以下を示し、術後1カ月では各々54±5.1%,5.1±0.9mcg/mlであった。Protein CとT.Bil、GPT、LDHとの間に明かな関係を認めなかった。術後遠隔期の6例について検討すると、Protein Cは2例で低値(35,53%),4例で正常値(83±5.7%)と2群にわかれ、Protein Sは5.7±1.6mcg/mlで1例を除いて低値であった。そこで、Protein Cが低値であったLow PC群2例と正常値であったHigh PC群4例に分けて比較検討すると、TATはいずれも正常値であったが、PICはHigh Protein C群で高値をとり線溶亢進を示すものがあった。growth factor,グルカゴン,ソマトスタチンについてはいまだ結果をえていない。【まとめ】1)Protein C,SはFontan型手術術後急性期には低値であり、遠隔期にもProtein Cは2例(33%)で、Protein Sは5例(83%)で低値であった。2)TAT、PICはともに術後急性期には高値で、凝固系、線溶系ともに亢進していたが、遠隔期には正常化していた。肝静脈中の体液性因子とそれと肺動静脈瘻発症の関係に関しては、今後の検討が必要である。
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