HeLa細胞核抽出液中には少なくとも6つの一般転写因子がRNAポリメレースIIによる正確な転写開始に関与していると考えられる。我々はそのうちTFIIF(FCあるいはRAP30/74)について研究してきた。本年度はTFIIF各サブユニット間の結合および転写活性に関与するドメインを各サブユニットの欠失変異を用いて追究した。RAP30とRAP74のどのドメインが結合に関与しているか、まず野生型RAP30とRAP74の欠失変異の組合わせについてCATアッセイを行った。RAP74のアミノ酸残基62-171をもったペプチドがCAT活性をもった最小の断片であった。一方野生型RAP74とRAP30の欠失変異の組合わせではRAP30の1-110アミノ酸残基のクローンがCAT活性を示した最小の断片であった。したがってRAP30の1-110のアミノ酸残基がRAP74の62-171のアミノ酸残基と相互作用し、ヘテロダイマーの形成に関与することが明らかとなった。次にRAP74の欠失変異蛋白によりin vitro転写活性の再構成を試みたところ、N末端側73-205及びC末端側356-517のアミノ酸残基が野生型RAP74と同じ転写活性を有するために必要であった。以上の結果からRAP74のN末端側はRAP30のN末端側と相互作用し、更にRAP30のバクテリア・シグマファクターとホモロジーが高い領域を通してRNAポリメレースIIと複合体を形成するものと考えられる。またRAP74のC末端側は触媒反応に関与すると推定される。
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