TFIIFは基本転写において必須の転写因子であり、バクテリアRNApolymeraseのбサブユニットにホモロジーが高い部分が存在する。TFIIFの機能を分析する試みの一つとして、バクテリアのin vitro転写系への効果を追求した。その結果、TFIIFのみが転写開始を増強し、他の基本転写因子、TBP、TFIIB及びTFIIEにはそれがみられなかった。その効果はTFIIFの74kDaサブユニット(RAP74)がバクテリアRNA polymeraseのλファージPLプロモーターへの結合を増強することによることが判明した。なおその増強の効果はRNA polymeraseと鋳型DNAとの比が低い場合にみられた。いろいろの欠失変異をRAP74に作製し、転写活性を測定したが、増強活性を有する領域は特定出来なかった。またRAP74のRNApolymeraseへの解合は認められたが、弱いものであった。その他TFIIFに関する実験ではバクテリア中で産生した各サブユニット(RAP30/74)はnativeのそれらよりSDS-PAGE上分子量が小さいことが判明し、転写後の修飾による調節が示唆された。実際リン酸化が関与しているのではないかという考えのもとに、native TFIIFをアルカリフォスファターゼ処理をするとnative RAP74はバクテリア産生のそれと同じ位の分子量に減少したが、native RAP30にはそれがみられなかった。分子量の減少と転写活性それは相関していた。またTFIIFは転写の関始複合体形成に関与するのみならず、転写のelongationにも関与しており、脱リン酸化が後者の活性をも減少していることが判明した。現在それぞれのサブユニットについてnativeとリコンピナントポリペプチドを精製し、ハイブリドを作製し、リン酸化の転写活性への意義について追究している。結晶構造解析のためのRAP30の大量精製は、マルトース結合蛋白との融合蛋白ではあるが、アミローズ・カラムによる精製が充分でなく進行していない。
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