基本転写因子TFIIF(RAP30/74)はRNAポリメラーゼIIによる正確な転写開始と伸張に必須である。バクテリアで産生した各サブユニット(rRAP30/74)はnativeのそれ(nRAP30/74)よりSDS-PAGE上分子量が小さいことが判明し、転写後の修飾による調節が示唆された。サブユニットの一次構造から推定されるように、C末端部にはリン酸化をうける可能性があるアミノ酸残基が存在し、今回リン酸化による修飾の可能性とその意義について追究した。nRAP30/74をアルカリフォスファターゼ処理するとnRAP74はrRAP74と同じ分子量に減少した。しかしnRAP30には見られず、リン酸化以外の修飾が推定された。しかもnRAP74のフォスファターゼ処理による分子量の減少と転写活性及び伸張活性の減少とは相関していた。またフォスファターゼ処理したnRAP30/74はDBPolF複合体形成及びRNAポリメラーゼIIとの結合がnRAP30/74より弱かった。rとnの各サブユニットの交換実験ではnRAP74を使用した時のみ転写活性とDBBPolF複合体形成が促進された。したがってRAP74のリン酸化は転写開始および伸長反応において正の調節を行っているという考えに一致する。また従来RAP30がDBPolF複合体の構成員と直接相互作用するといわれているが、RAP74のリン酸化によってDBPolF複合体形成能が変化することからRAP74の関与を否定出来ない。
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