抗不整脈薬の長期投与が致死性の不整脈を必ずしも抑制しないで、かえって突然死などによる死亡率を薬物を投与しない群において増加させることが米国の心筋梗塞後の患者を対称とした臨床試験(CAST Study)で示され、用いられたクラスI抗不整脈薬の催不整脈作用が注目されている。また現在不応期を延長させリエントリー不整脈を起こさせなくする選択的な作用を持つと考えられているKチャネル抑制薬であるクラスIII抗不整脈薬がQT延長と共に重篤な心室性不整脈を誘発しえることが動物でもヒトでも認められている。従来不整脈を抑制するためにモデルを作ることはあったが、ある条件下で薬物が不整脈を起こしやすいかを検討する動物モデルはほとんどなかった。虚血回復期、自律神経支配の異常時などに抗不整脈薬が不整脈を自然発生させるか、または、刺激により不整脈を誘発しやすくするかをイヌのモデルで検討を始めた。本年度は長時間ホルター心電計を導入し、臨床で高い確立で心室性不整脈を誘発するクラスIII抗不整脈であるMS-551やE-4031を経口投与し、無麻酔下での心電図の変化を検討した。正常なイヌでも時折心室性期外収縮は記録出来るが、現在まで行なったクラスIIIの経口投与実験では、重篤な心室頻拍は出現していない。来年度は心電計を増やし、心筋梗塞慢性期のイヌを用いて検討する予定である。
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