研究課題
新しい加速法のひとつに、プラズマ航跡場加速がある。これは2つ(以上)のバンチを用い、先行するバンチ(ドライブバンチ)が作るプラズマ波の航跡場のポテンシャルで、後続するバンチ(テストバンチ)を加速する方法である。東京大学工学部原子力工学実験施設は、独立な2つのライナックを持つので、ドライブバンチ用・テストバンチ用にそれぞれ専用の電子リニアックを用いることができる。平成4年度で、エネルギーの異なる2台のライナックからのビームをプラズマチェンバー内で同一軸上を走らせるための、ビーム輸送系の製作を終了した。今年度は、プラズマ中にドライブバンチを通し、これが励起する航跡場でテストバンチを加速することを試みた。プラズマ発生容器は以前に実験で用いたものを流用した。実験では、単パルスのドライブバンチを用いた。理論によれば、このときプラズマ密度をビーム内電子密度より小さく選ぶと、ビームがプラズマ中の電子を一時的に全部ふきとばす。このために非線形プラズマ振動を生じ、大きな加速勾配が得られる。実験においては、プラズマ密度をビーム密度の1/5ないし1/10としたとき、理論を上回る大きな加速が観測された。この加速は、ドライブバンチとテストバンチが接近したときに限り観測された。これはプラズマ波がすぐに崩壊してしまうことを示しており、理論と一致している。
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