研究概要 |
本研究の目的は半導体レーザを外部共振器内を用いて発振させ,高分解分光などの実験に適した周波数安定,狭線幅,連続同調可能なレーザ装置を開発することである. 半導体レーザを外部共振器で動作させるには結晶端面に無反射膜を蒸着する必要がある.通常,蒸着は業者に依頼するが,所望の膜を得ることは困難である.そこで,本研究では専用の蒸着装置を作製し,半導体レーザを動作させながら反射率をその場モニターし,完全な無反射膜を形成することとした.市販の半導体レーザのハーメチックシールを除去し,結晶端面にSiO膜を真空蒸着で形成した.通常の膜厚モニターでは精度が不十分なので,半導体レーザを蒸着中も動作させ,そのしきい値電流が極大になったところで蒸着を停止した.これまでに数個の試料を作成したが,条件により残留反射率にバラツキが見られた.特に,真空度,蒸着停止のタイミングが重要であることが明らかになった. 一方で外部共振器半導体レーザ装置を設計し,試作した.外部共振器はリトロ配置の回折格子,エタロン,出力カップラからなる. 蒸着を施した半導体レーザを外部共振器に取り付け,同調特性を測定したところ,同調可能範囲は10mn程度,また蒸着前の波長に比べて短波長側にシフトする傾向がみられることが分かった. 今回製作した外部共振器は全体の構造が比較的大型であり,また回折格子のマウントも既製品を用いたため振動の影響を受けやすいものになった点である. 現在,小型で堅牢な構造をもつ外部共振器を設計中であり,これが完成すれば安定な連続同調可能な半導体レーザシステムが実現するものと期待される.
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