研究概要 |
不規則波発生装置を用いた水槽実験を行う際の最大の問題点は,水槽中に設置した実験模型からの反射波の存在である。これが水槽中を往復して模型構造物に何度も作用する。一方,造波機は反射波の存在に関わりなく所期の不規則波を造波するようにプログラムされており,構造物には所期の波と再反射波の重なりあった波が作用するため実験条件の制御が困難となる。この研究は構造物からの反射波を制御して所期の実験条件を維持し続けることの出来るシステムの制作を目指したもので,反射波の制御に際して位置吸収制御方式と位置波形制御方式の2方式が試みられた。前者は反射波を検出しその波を造波板の後方に通過させるように造波板を制御する方式であり,後者は造波板前面の波形がプログラムされた所期の入射波の波形と同じになるように造波板をフィードバック制御する方式である。この研究ではこれらの制御に必要な数値フィルターに工夫を行い,時定数が小さくかつ周波数特性の良好なものを提案し,現象に起因する制約,因果率など数値フィルターが抱える問題を有効に解決している。実験によるシステムの検証の結果,前者は規則波の反射波制御に高い効率を示し,後者は不規則波の反射波制御に非常に有効であることがわかった。この研究で開発したシステムは規則波,不規則波の場合とも,従来公表されている反射波制御システムに比して高い反射波制御効果を持つこと,さらにシステムは市販のパソコンとA/D,D/Aボードで構成されており非常に安価かつコンパクトであることも大きな特徴である。この研究で開発したシステムは,わが国に数十台あると予測される反射波制御機構を持たない"旧タイプ"の不規則波発生装置に簡単に取り付けることが出来,新タイプの装置に生まれ変わらせることが可能である。
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