研究概要 |
連続鋳造の高速化および軽圧下操業に伴って鋳片の内部割れが重要な問題となっている。内部割れは連鋳鋳片の凝固界面近傍に割れ発生限界以上の歪みが作用したときに発生するものであり、固液共存域における変形挙動と密接な関係がある。本研究では連鋳時の凝固条件をサーモレスタで再現することにより、凝固点近傍での鋼の機械的性質を測定した。また、その結果を固相率との関係から把握することを目的として、溶質分配過程のシミュレーションを行った。0.06〜0.6wt%カーボンの鋼についてはZST(強度発現温度)は固相率0.7,ZDT(延性発現温度)は固相率1.0に相当する温度であるという知見が得られている。今回はさらにカーボン量の多い試料S(0.8wt%C)およびサルファ量の多い試料F(0.06wt%S)について高温引張試験を行い、引張強度および破断にいたるまでの変位を測定した。また、0.6wt%カーボンの試料を用いて歪速度の影響についても調べた。 高カーボン,高サルファ試料の試験結果では強度は凝固完了前に固相率0.7前後で現れており、この点は過去のデータと同様であった。これに対して変位の測定結果では、凝固完了予想温度以下においても伸びが認められず、ZDTを決定できなかった。溶質分配シミュレーションによる凝固完了予想温度とZDTが一致しないのは今回の試料では過去に用いた試料よりカーボン,リン,サルファ等の溶質元素量が多いためであると思われるが、ZDTへの影響機構は不明である。 次に歪速度の影響についてであるが、まず引張強度は歪速度が大きくなるにつれて上昇する傾向が認められた。また、歪速度10^0,10^<-1>,10^<-2>では伸びはほぼゼロであったのに対して10^<-3>では約5mmの伸びが測定された。従って凝固温度域においても機械的性質は歪速度に依存すると結論される。
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