研究概要 |
平成5年度本試験研究の進行状況は以下の1-5の項目の通りである. 1.HFを用いるハロゲン交換フッ素化反応によるフルオロ複素環芳香族の合成およびその反応:ハロゲン化複素環化合物のヘテロ原子が強くプロトン化してipso炭素が活性化され,HF中の塩基により求核性が高められたFイオンによって,SNAr的な機構で高収率で対応するフッ素化複素環芳香族化合物を与えた.また,得られたフッ素化複素環化合物のアルコールに対する反応性が他のハロ体よりも著しく高いことを明らかにした. 2.含フッ素置換基を持つ芳香族炭化水素化合物合成:アリールジアゾニウム塩のフッ素化分解がHF-塩基溶液中で高収率・高選択的に行えることを明らかにし,特に従来困難視されていた極性置換基を持つ含フッ素置換ベンゼン類を高収率で合成することを可能にした. 3.フロラールと不飽和化合物のルイス酸誘導型エン反応:酸に対して敏感なジエンや1,1-二置換オレフィン類とフロラールとのエン反応に対して亜鉛系ルイス酸が効果的であり,また,フロラールの反応におけるρ値が他のハロラール(Cl,Br)やCH3CHOの場合の1/2程度と言う特異性を示し,反応機構に違いがあることを示唆する結果を得た. 4.HF-塩基溶液を用いる有機化合物の電解フッ素化反応:脂肪族アルデヒドのホルミル水素が選択的にフッ素置換されることを見いだした.一方,芳香族アルデヒドでは芳香核のフッ素化も併発した. 5.アルケニルボロン酸のOH基のシアヌルフルオライド(CNF)によるフッ素化とα,β-不飽和ケトンへの1,4-付加反応:CNFが効果的にフッ素化試薬として作用し,フッ素化されたボロン酸が立体選択的にα,β-不飽和ケトンに1,4-付加して多官能基化されたケトン類を高収率で生成すること見いだした.
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