当該年度は、トンネル製作の原点にもどり、薄いアルミニウムの高品質ニオブ系トンネル接合の製作プロセスの見直しを行った。製作プロセスを簡単化することを指標にしたが、その結果、漏れ電流100nA、動作抵抗2.5kΩのトンネル接合が製作できるようになった。この製作方法は、厚いアルミニウムのトンネル接合にも有効であろうと思われる。 一方、超伝導トンネル接合の応用のひとつとして、シンクロトロン放射光を利用したX線実験がある。超伝導トンネル接合は、清浄なエレクトロニクス雑音が必要とされるので、世界的にも放射光実験施設での放射光X線の測定には使用されたことがない。本研究で製作したトンネルで放射光X線の測定を試みた。その結果、雑音遮蔽を行った結果、放射光施設でも超伝導トンネル接合によってX線信号ピークが得られることが確認できた。この実験でのエネルギー分解能は、6keVのX線に対し520eVであるが、今後の雑音遮蔽の工夫によって分解能の向上が期待される。 超伝導トンネル接合の動作を定量的に把握するためには、種々の超伝導体による実験結果を総合的に説明するアプローチが有用である。本研究では、ニオブ、タンタル、スズ、アルミニウム超伝導体での実験結果を用い、トンネル接合動作の総合的把握を試みた。その結果、準粒子挙動の物質依存性がわかり、信号の大きさ、エネルギー分解能に関する傾向をつかむことができるようになった。
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