超伝導トンネル接合による放射線検出器は、半導体による検出器よりも一桁程度優れたエネルギー分解能になることが予想されている。本研究ではトンネル接合中のアルミニウムに注目し、高品質のニオブ系トンネル開発について、次のように研究を行った。 (1)薄いアルミニウム膜による高品質ニオブトンネル接合の製作 フォトリソグラフィー法による製作プロセスを簡単化することによって、トンネル接合の性能が向上することを示し、薄いアルミニウム膜によるニオブ系トンネル接合の製作法を確立した (2)放射光X線の測定 放射光では広いエネルギー範囲のX線が得られ、将来的に放射光実験での超伝導トンネル接合検出器の使用が有望視されている。しかし、実験施設のノイズ環境が悪く今まで超伝導トンネル接合のテストが行われたことはなかった。本研究では前項で得られたトンネル接合を使用して、放射光による15keVまでの高エネルギーX線を測定し、高エネルギーX線に対する応答が非線形であることがわかった。 (3)ニオブ系トンネル接合の性能評価と基礎設計 簡単なアプローチでトンネル接合放射線検出器の基本特性を調べる方法について考察した。ニオブ系トンネル接合を含めてトンネル接合放射線検出器の包括的な動作はまだよく解明されていないが、ここではその動作を工学的に把握する試みを行った。これによって、トンネル接合放射線検出器の一般的な性能評価と設計指針を得た。 (4)厚いアルミニウム膜によるニオブ系トンネル接合の製作法 高品質トンネル接合の製作方法について、湿式法で厚いアルミニウム膜を処理する方法を考案した。実験的に調べた結果、この方法による高品質トンネル接合の製作には問題が残されていることが明らかになった。
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