研究概要 |
1.報酬に関する逆説効果の検討 学習条件を集中訓練にすれば,報酬の逆説効果は脊椎動物の多くの種で観察される。しかし1日1試行のような分散訓練を与えた場合には,哺乳類,鳥類では肯定的結果,魚類では否定的結果,それ以外の動物では研究数が少なく効果の有無の断定はできない。平成4年度の予備的な研究を土台にして,報酬の逆説効果である部分強化消去効果(PREE),小報酬消去効果(MREE),継時的負の対比効果(SNCE)を1日1試行条件で検討し、カメの情報処理様式の推定の一助としようとした。直線走路型泳路を用いてクサガメを訓練した結果,(1)大報酬は小報酬よりも習得を速める効果をもつが,(2)大報酬から小報酬へ移行しても,依然として大報酬の遂行のレベルを維持し,SNCEは見られなかった。(3)消去抵抗は大報酬群が小報酬群を有意に上回り,逆MREEが見られた。(4)連続強化と部分強化両群間には習得・消去を通じて差がなく,PREEは観察されなかった。以上の結果は,(5)同様の条件下で,哺乳類が報酬量の移行(大から小,あるいは習得から消去事態)に対処する学習様式とは異なること,(6)カメの学習結果は幼体ラットを用いた結果と類似しているので,カメは報酬量の減少に対しフラストレーションを経験しないか,またはそれを経験しても報酬移行後の遂行を規定する連合機構にフラストレーション反応が組み入れられないことが推測される。カメのフラストレーション反応に関する研究はないので検討する価値があろう。 2.過剰訓練逆転効果の検討 本年度の計画にはなかったが,平成4年度に行った位置課題実験を補強するため,視覚課題を用いてOREの生起を検討した。その結果,過剰訓練は逆転学習を有意に遅らせ(逆ORE),弁別学習様式は二過程説の主張に従うと,哺乳類よりも,視覚優位のニワトリ(鳥類)に似ていることがわかった。
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