研究概要 |
光学活性アルキルコバロキシム錯体の固相光ラセミ化反応における固相特異的現象をもたらす機構の解明と不斉な結晶格子に制御されたbeta→alpha不斉光異性化反応を見いだすことを目的として研究を行い、平成4年度の研究で固相特異的現象は分子間水素結合による反応基の非対称な拘束に基づくことを明らかにした。また、不斉な結晶格子を生成するためのキラルハンドルとして光学活性軸配位子((R)-1-Me-propylamine,1-(1-Naphtyl)ethylamine及び(R)-2-Phenylglycinol)を配位したbeta-シアノエチルコバロキシム錯体の固相光異性化反応を検討し、不斉な結晶格子に制御された不斉光異性化反応が起こることを見いだした。 本年度は(1)シアノエチル系列で新たな光学活性軸配位子を配位した錯体を合成した。更に、さきに解明された固相特異性発現機構即ち分子間水素結合が働く可能性を期待して、beta位にCOOCH_3,CONH_2,CONHPh,CONHCH_3を導入した新規な錯体を合成した。新規に合成した錯体の固相光反応を検討した結果、これらの場合も固相不斉光異性化反応が起こることを明らかにした。その中で、カルバモイル系列の錯体では、比較的高い不斉選択性を与える例が見い出されたが、エステル系列の錯体の場合には良好な結果は得られなかった。また、(2)2-シアノエチル及び2-メトキシカルボニルエチル系列の錯体のX線結晶構造解析を行い、比較的高い不斉選択性をもたらす錯体は、反応基が上方から圧縮されキラルなコンホメーションをとることを強制されており、他方不斉選択性の低い錯体の結晶の場合、反応基は平面配位子に対して垂直に立ったコンホメーションをとっていることを明らかにした。また、結晶構造に基づいて不斉選択機構を解明した。
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