本年度の研究計画に対応させた研究実績の概要は以下のようである。 エントレインドエアを十分(約6%)に混入したAEコンクリートを対象とし、その打込み後0.5〜10日(20℃)に、1日1回の緩速凍結融解(+10〜-18℃)を10サイクル与えた場合の内部劣化の程度を動弾性係数の変化で調べた試験では、(1)初回凍結を受ける直前の圧縮強度が小さいほど内部劣化が大きくなること、(2)同じ強度レベルでも、水セメント比が大きい場合ほど内部劣化が大きくなること、等の傾向を示す結果が得られた。ただし、この緩速凍結融解試験による動弾性係数の低下は比較的小さく、最も条件の悪い場合(水セメント比が65%、初回凍結を受ける際の圧縮強度が28kgf/cm^2)でも(修正)相対動弾性係数の値は85%以上であった。また、圧縮強度も、初回凍結を受ける際の強度が大きいものほど低下率は小さくなったが、本来有していると考えられる強度の約80%は確保されていた。そして、これらの劣化を生じた供試体を水中に76日間静置しておいたところ、耐凍害性能と圧縮強度は健全な状態にまで完全に回復することが確認された。これらの結果から、本研究で緩速凍結融解を与えた供試体の内部劣化は、セメントの水和が継続すれば比較的容易に修復可能な微細なひび割れであると考えられた。しかしながら、この程度の劣化であっても、それらがそのまま残存すれば、コンクリートの耐凍害性能が損なわれ、特に水セメント比が55%以上の範囲においてこの悪影響が顕著になることが認められた。
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