今年度の研究は持続荷重下のたわみの増大について検討した研究(1)と同じくひび割れ幅の増大を検討した研究(2)からなる。 研究(1)では長期たわみ特に端部鉄筋の抜け出しによるたわみのメカニズムを解明しその増加量を把握するために片持梁の持続載荷実験を行うとともに付着解析モデルを提示し、付加たわみを解析した。主な結果は次の通りである。(1)一般的な部材両端に異なる力が作用する付着解析モデルを提案した。それを用いて、鉄筋ひずみ分布及び抜け出しを解析した結果は実測値をよく捉えた。(2)片持梁の端部ひび割れ幅は、スタブ部分と梁部分からの抜け出しからなり、持続載荷後1日間に付着応力の緩和によって急増し、その後はコンクリートの乾燥収縮に応じて緩やかに増加する。(3)片持梁のたわみは、梁の曲げによるたわみとスタブ部分の抜け出しによる付加回転たわみからなる。付加回転たわみは、初載荷時では全たわみ量の30〜50%を、持続載荷中では52〜61%を占めている。また常時設計荷重域の長期たわみは持続載荷開始時のたわみの約1.73〜1.80倍である。 研究(2)では、平成4年度の研究で把握した付着クリープ及びコンクリートの乾燥収縮のひび割れ幅の増加に対する影響に注目し、長期ひび割れ幅算定式を誘導し、次いで予めスリットを入れてひび割れを生じさせた単純梁の持続載荷実験を行い、持続荷重下におけるひび割れ幅の増加を調べるとともに、その影響要因を解析した。主な結果は次の通りである。(1)付着理論に基づき長期ひび割れ幅算定式を誘導した。それにより単調載荷時のひび割れ幅及び持続荷重下におけるひび割れ幅の増加を捉えた。(2)持続載荷開始後95日において、乾燥収縮によるひび割れ幅の増加量は全増加量の80〜90%を占め、その影響が大きい。圧縮側コンクリートのクリープ及び付着クリープによるひび割れ幅の増加量は全増加量に占める割合はそれぞれ約4〜10%である。
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