研究概要 |
αーケトグルタール酸よりエチレンを生成するpenicillium digitatumとPseudomonas syringae pv. phaseolicola PK2の2つの菌株よりエチレン生成酵素(EFE)を大量精製する方法を開発した。本年度はそのうち,Ps. syringaeのEFEについて調べた。精製されたPs. syringaeのEFEは比活性660nmol/mg protein/minを持ち,分子量はゲル濾過法で36kDa,SDS-PAGEで42kDaであった。等電点と最適pHは5.9と7.0〜7.5で,これらの性質は以前我々によって精製されているP. digitatumのEFEのものと大差がなかった。しかし,両者のN-末端アミノ酸配列は全く異なっていたことより,両者のタンパク質は全く異なっているものと考えられる。ついで,Ps. syringaeからの精製酵素標品を用いて,エチレン生成反応の化学量論式を構築した。その結果,エチレン生成酵素はα-ケトグルタール酸をエチレンにする反応とコハク酸を生成する反応を同時に触媒しており,その比は約2:1であった。主反応において,α-ケトグルタール酸はオキシゲネーションを受け,1分子のエチレンと3分子のCO_2を生産した。もう1つの反応では,α-ケトグルタール酸とL-アルギニンはそれぞれモノオキシゲネーションされ,コハク酸とCO_2とL-△^1-ピロリン-5-カルボン酸を生成した。これら2つの反応の共通の中間体として,L-アルギニンとα-ケトグルタール酸はSchiff-baseを形成しているとする dual-Circuitモデルを堤案した。
|