これまでにM13ファージのプロテインIII遺伝子中に見い出されたミニサテライト類似配列がカンキツDNA中に多コピー存在し、その反復単位をプライマーとしたPCR増幅産物により、サザンハイブリダイゼーションによるDNAフィンガープリントと同レベルの品種識別が可能であることを示してきた。これらの産物は、カンキツのミニサテライト配列を含んでいることが期待できたので、クローニングを行った。各クローンは、Reverse Genomic Hybridization により、カンキツゲノムにおける反復度の差が濃淡の差として特徴づけることができた。さらに、比較的高い反復度のものをプローブとして制限酵素処理を施したゲノミックDNAに対し、サザンハイブリダイゼーションを行ったところ、ミニサテライト様のバンディングパターンを示すクローンが得られた。同様の手法で、植物においてDNAフィンガープリンティングの報告があるM13ファージ以外のミニサテライトの反復単位を利用して、クローンの単離を行ったところ、明瞭なバンディングパターンを示す高多型性クローンを数種類、得ることができた。これらは、カンキツDNA自体から単離したため、先の他の生物のクローンよりも、より厳しい条件でDNAフィンガープリントを作製することができる。したがって、再現性が高く、検出バンドの多い、より情報量の多い、クローンが得られたことになる。
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