1.土壌や有機物含量の異なる草地、耕地の土壌微生物バイオマス(バイオマス)リン量の把握とバイオマス炭素、窒素とバイオマスリンとの関連を検討する目的で、マサ土(広大農場)および黒ボク土(広島県畜試)に立地する有機物投入量の異なる永年草地と一年生青刈作物栽培地の土壌を採取し、バイオマス炭素、窒素、リンを測定した。その結果、1)黒ボク土のバイオマスリンの測定は、従来法では測定上問題が生じたため、現在陰イオン交換膜を利用した測定法を開発中である。2)草地、耕地土壌のバイオマスリン量は、家畜糞堆肥などの有機物投入量の多い区で高く、また、作付飼料作物の種類や耕起、不耕起などの管理によって大きく異なった。すなわちバイオマスリン量は20〜100μp/g乾土と圃場間で大きく異なり、バイオマス炭素の10分の1以上と量的にも多かった。3)バイオマス炭素は窒素とは高い相関を示したが、リン量との相関は低くバイオマスC/P比は必ずしも一定ではなかった。 2.バイオマス炭素のプライミング効果やバイオマス炭素、リンの代謝回転速度に及ぼす添加有機物の影響を検討する目的で、草地土壌に^<32>Pを添加した後、^<14>C‐グルコースを添加し、バイオマス炭素、リンや^<14>C、^<32>Pの比活性(新たに形成されたバイオマス炭素、リン)放出CO_2、^<14>CO_2などを測定した。その結果、1)グルコース添加による元のバイオマス炭素の活性化(プライミング効果)が確認された。2)グルコース添加で新たに形成されたバイオマスの減少割合から算定したバイオマスリンのみかけの代謝回転速度は約35日とバイオマス炭素の2倍以上速かった。今後、添加有機物を変えて代謝回転速度を解析するとともに、バイオマスを利用した土壌中の難溶性リンの利用やバイオマスリンと栽培作物、添加有機物との関連をさらに解析する予定である。
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