研究概要 |
白血球膜に局在する活性酸素(スーパーオキシド;0_2^-)生成系のNADPH酸化酵素系は,膜因子のb型シトクロム(cyt b-558)及びFAD蛋白,細胞質因子のp47,p67,低分子G-タンパク質よりなる一種の電子伝達系である。今年度は,その中で特に0_2^-生成サイトと考えられている重要なcyt b-558のヘム鉄の性質を明らかにするために,電子スピン共鳴(ESR)を用いて解析した。白血球はブタ血液から顆粒球を分離した。 好中球膜から塩処理により,ペルオキシダーゼ画分を分離して分光スペクトルを測定したところ,この画分にはミエロペルオキシダーゼ以外に好酸球のエオジノフィルペルオキシダーゼが見出された。このESRスペクトルは,g値が2.86に低スピン型シグナルが現われ,このシグナルは東大医科研,金ヶ崎グループがcyt b-558であると報告したシグナルと一致した。我々の結果は,彼らの報告したシグナルは測定試料に混在した好酸球のペルオキシダーゼによるものであることを明らかにした。 以上の結果より,ペルオキシダーゼを十分に除去した膜画分から,シトクロムbを可溶化し,DEAE-Sepharose,Heparine-Sepharoseによりシトロクムbを精製した。この標品にはα,β両サブユニットが含まれ一酸化炭素は結合せず,また再構成系で0_2^-産生が顕著に起きるので,膜内に存在する時の性質を維持している未変性のヘム鉄が確認できた。この標品を85μMまで濃縮してESRスペクトルを測定した(条件,5〜10k,Xバンド)。g値が3.26に低スピン型のヘム鉄のシグナルが観測された。このESRシグナルは,2mMシアンの添加で変化せず,dithioniteで還元すると消失し,また,シトクロムbの濃度依存性があることなどから,g_1値が3.26のESRシグナルが,シトクロムb-558の低スピン型ヘム鉄のシグナルであると帰属することができた(Fujii and Kakinuma,B.B.A.,1992,Miki et al.J.Biol,Chem.1992)。
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