研究概要 |
白血球(好中球などの食細胞)は、貪食に伴って急激に酸素を消費する。この消費した酸素はスーパーオキシド(O_2)に変えられて殺菌作用に利用される。このO_2生成系は細胞膜に局在する因子(b型ヘムとFAD)と細胞質因子(p47,p67,低分子G-蛋白質)で構成される。好中球を刺激すると、これらの細胞質因子が会合し、膜因子に結合してNADPHを基質としてO_2を生成し、膜外へ遊離する。我々は、この膜系の電子伝達因子の基礎研究(I)を行うと共に、O_2生成系の異常症の研究(II)を行った。 1.この膜因子の中で重要な役割を担っているシトクロムb-558のヘム鉄の性質を明らかにするために、電子スピン共鳴(ESR)のシグナルを測定した。その結果、ミクロソームのシトクロムbとは異なるg値=3.2の特有な低スピン型ヘム鉄であることを明らかにした。一方、膜成分中、フラビンとしてFADが関与し、FMNは殆んど存在しないこと、細胞質因子はFAD蛋白質ではなく、活性化に関与する因子であることなどを明らかにした。 II.我々は、今日まで東京及び近県の国公立病院より、重症感染症患者の好中球機能検査を依頼され、かなりの高率で好中球のO_2生成異常症(慢性肉芽腫症,Chronic granulomatous disease:CGD)の患者を発見してきた。これらのCGD患者は、O_2生成機能欠損という同一の表現型でも、遺伝的には複数のタイプが存在する。現在遺伝子解析中である。
|