腎機能に対する二酸化ゲルマニウムの作用を明らかにすることを目的として本研究を行った。まず、二酸化ゲルマニウムが生体内に取り込まれた場合、高濃度に蓄積するとされる腎でのゲルマニウムの分布状態を検討し、次いで、長期間二酸化ゲルマニウムを投与した場合の影響について、腎を中心に検討を加えた。 本研究により以下の点が明らかとなった。 1.腎および腎subcellular fraction中のゲルマニウム分布の変化 1)9週齢のWistar系ラット(雄)に、二酸化ゲルマニウム水溶液を1回腹腔内投与した場合(50mg Ge/kg bw)、腎におけるゲルマニウムの減少は早く、その生物学的半減期は約10時間であった。 2)腎の各subcellular fraction間でのゲルマニウムの分布状態は、経時的にはほとんど変化せず(Nuclear fr.12〜14%、Mitochondrial fr.10〜15%、Microsomal fr.2〜7%、Cytosolic fr.65〜76%)、Cytosolic fr.にその大部分が存在していた。これを、蛋白当たりで見ても同様で、Cytosolic fr.におけるゲルマニウム濃度は、他のfractionの約3倍以上であった。 2.二酸化ゲルマニウム長期投与の影響 1)Wistar系ラット(雌)に、7週齢から13週間、二酸化ゲルマニウム水溶液を皮下投与した場合(25mg Ge/kg Bw)、5週めまで、体重増加の抑制傾向、尿量の増加、尿浸透圧の低下が観察された。 2)尿のpH、蛋白、糖、潜血、β_2-microglobulin、N-acetyl-β-D-glucosaminidaseには異常は見られなかった。 3)投与後の腎と心で肥大化傾向が見られたが、著明な組織所見は得られなかった。
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