担癌患者の中では特に食道癌、肺癌に好酸球増多を呈するものが多く、これらの患者の好酸球を分離し実験を押し進めた。担癌患者の好酸球は非担癌患者より採取したものと比較すると、低比重好酸球の比率及び癌細胞に対するADCC assayでは有意差は認めなかった。しかしながら、これらの患者にLAK療法や放射線療法が加えられるとIL-5、GM-CSFで刺激した時の好酸球表面補体レセプターやグロブリンレセプターの発現が非担癌患者の好酸球よりも強く、また癌細胞に対する感受性が高いものと考えられた。癌患者血清中のIL-5濃度は非担癌患者と比較しては明かな差はなく、また癌種による違いも認められなかった。in vitroの実験では担癌マウスにIL-5を局注した場合、局所の好酸球数の増加は見られるが、腫瘍の退縮についてはまだ個体数が少ないこともあり一定の傾向は得られていない。これからの課題と考えられる。 ヒトLAK細胞をIL-5で刺激するとLAK活性は増強することが確認された。担癌マウスにおいてもIL-5刺激LAK細胞の投与は通常のLAK細胞よりも強い抗腫瘍効果のあることが判明した。現在、癌種、投与法、投与interval等を変えて制癌作用の最も強くなる条件を検討し、実験モデルの確立を急いでいる。 以上の実験系でGM-CSFではin vitroでの好酸球の腫瘍障害性の増強作用がIL-5と比較すると微弱であること、またマウスに対する毒性が非常に強いためin vitroでの実験系はほとんど進んでいないことを考慮し、来年度にはサイトカインとしてはIL-5だけに絞って実験を進める計画である。
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